「民度のレベルが違う」
【写真】過去に度重なる「舌禍」が波紋を呼んだ麻生財務相。マスクをしていても…
日本の新型コロナウイルスによる死者数が少ない理由について麻生太郎財務相が述べた言葉だ。麻生氏は批判に対して、「他国を貶めるというのとは違う」と釈明し、報道は沈静化した。
私が今回この発言を取り上げるのは、この言葉の背景に日本が抱える深刻な問題が隠されているからだ。
その問題とは、この国の支配層に根深く蔓延る「日の丸信仰」である。それは、「日本民族は世界一優秀だ」という根拠なき優越思想に凝り固まり、日本が他国より劣っている点を認識することができないという意味だ。彼らの歴史の最終ページは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われた昭和終期のまま止まっている。
麻生発言の前提となる「日本人の新型コロナウイルスへの対応が優れているから、人口当たりの死者数が非常に少ない」という点だが、これは、欧米諸国と比べた場合の話で、アジア諸国と比べれば、日本は決して優等生ではない。
「ワールドメーター」のネットサイトを見ると、日本の100万人当たり死者数は、6月10日時点で7人。アジア大洋州主要国では、ベトナム0、台湾、香港、タイが1未満、中国(信用できるかは別問題だが)3、シンガポール・オーストラリア・ニュージーランド各4、韓国5人と日本より少ない。麻生氏はこの事実を完全に無視している。
さらに、死者数だけでなく、コロナ対応で際立ったのは、日本のIT化での遅れだ。国民1人10万円の給付では、多くの自治体でオンライン申請のほうが郵送よりも給付が遅れる事態に陥り、オンライン申請中止の自治体も相次いだ。休業中の労働者に給与を支払う企業を支援する雇用調整助成金のオンライン申請も開設直後に他人の申請内容が見えてしまう大失態で停止。16日後に再開したが、同じトラブルですぐ止まった。中小企業の命綱と言われる1社最大200万円を給付する持続化給付金のオンライン申請も、1カ月経過後も処理状況をオンライン確認さえできず、「IT原始時代」と揶揄される。