もちろん解体を先延ばしにしてもらえまいかと交渉はしてみたのだろう。しかしその場合、持ち主には税金がかさむし、もう買い手がついているとしたら工期が遅れることで色んな問題が出てくるだろうし、とにかく、無理だったのだ。
「撮影途中でメインセットが解体されてなくなる、なんてことはもう、これは、ちょっと面白いな」と二朗さんが言った。
「どうしましょ?」
監督もPも脚本上田さんも頭を抱えている。
ここから、家がないことを前提にストーリーを組み立てる、とはいかないのである。
事はそう簡単ではない。オンエアは6話で止まっており、残り6発(話)。
実はこのドラマ、すでに最終話まで書き上がっており、1話から順番に撮影したわけではなく、オンエアしていない話の中にも、2、3シーンを残すのみでほぼ撮影が済んでいる話もあるのだ。残されたほとんどのエピソードの中で、解体前、解体後が混在してしまうという状況。複雑なのである。
ならば残りの5エピソード、新たに上田さんに書いてもらい撮影し直すか。
そんな時間も予算もない!
あの枠のドラマの予算の低さを見くびってはいけない。
それに、1話からずっと、最終回に向けた伏線が張られており、その伏線はオンエア済み。
だから回収しなくてはならない。