とくに経済的に弱い立場に置かれているのが、契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなどの非正規社員だ。労働者に占める割合は増え、今は4割近い。経済危機に直面すると、雇用の「調整弁」として、解雇や雇い止めの標的になりやすい。

 厚生労働省によると、コロナ関連で解雇や雇い止めにあった人は6月5日時点で2万933人。同日までの1週間で増えた4210人のうち、非正規社員は約6割を占めた。

 景気回復が遅れると、窮地に立たされる企業や従業員はそれだけ増える。エコノミストで経済評論家の斎藤満さんは「社会的、経済的に弱い人ほどより厳しい状況に置かれるようになる」と警鐘を鳴らす。

「ある程度の蓄えがある人なら少しの間、仕事を休んでも暮らしていけます。しかし、余裕がない人は、生活がすぐに立ちゆかなくなる。コロナは経済的に優位な人と弱い人の格差を広げる恐れがあります」

 労働者の電話相談に応じる連帯ユニオン関西ゼネラル支部の大橋直人書記長も、次のように明かす。

「当支部には飲食店の店員やタクシー運転手、バス添乗員らシフト制で働く人からの相談が目立ちます。シフトに入れてもらえず仕事を減らされ、だからといって退職も求められずに“中ぶらりん”の状態になっている人もいます」

 非正規社員には時給や日給で働く場合も多く、勤務時間が減れば収入は下がる。会社側は任せる業務がないにもかかわらず、「休ませているわけではない」とし、休業手当を出さないケースもよくあるという。

 そもそも非正規社員は賃金水準が低いため、休業手当が出たとしても、十分な生活費用にはなりにくい。休業手当は企業で異なり、通常の賃金と同額を払うところもあるものの、多くは最低ラインの6割程度とされる。手当が月あたり数万円にすぎないことも多い。家賃や光熱費を払ったら、すぐに消えてしまう。

 さらに、コロナショックで急速に広まった在宅勤務(テレワーク)は、正社員と非正規社員の溝を改めて浮き彫りにした。

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