


経済に大きな打撃を与えた新型コロナウイルス。緊急事態宣言が解除されたものの、倒産や失業者が増えるのはむしろこれからだとみられている。景気回復に手間取れば、新たな貧困層を生み、富裕層との「格差」が一段と広がりかねない。
「4月から3カ月間の休業を言い渡され、自宅待機が続いて収入が途絶えています。シングルマザーなので困り果てています」
旅行会社で契約社員として働く大阪府の40代女性は、コロナで生活が一変し、悲痛な声を上げた。
全国の弁護士や研究者らでつくる「非正規労働者の権利実現全国会議」には、非正規社員やフリーランスで働く人から、こうした相談が寄せられている。受け付けた相談は500件超。コロナの感染拡大後、仕事が減り、生活が脅かされている現状が浮かび上がる。
とくに目立つのは、正社員と非正規社員の間にある格差だ。冒頭の女性が勤める会社では、正社員に出される休業手当が、非正規社員には出されない。会社に相談しても、まともに取り合ってもらえないという。
「本当にひどい扱い。使い捨てられているような気がして毎日つらい。子どもたちの顔を見るたびに申し訳なくて死にたくなります」
政府は5月25日に緊急事態宣言を全国で解除した。だが、景気回復の足取りは鈍い。感染の広がりは落ち着きつつあるように見えるが、「第2波」「第3波」のリスクがくすぶり、消費や投資の動きがコロナ以前の水準にまで戻るには時間がかかりそうだ。
同会議の事務局長を務める村田浩治弁護士は「当初は観光業や宿泊業からの相談が多かったが、製造業など様々な業種から寄せられるようになっています。大手メーカーの工場などで『派遣切り』が集中したリーマン・ショック後と異なり、企業に処遇改善を求める集団訴訟などに発展する動きは限られています。ですが、労働者が抱える不安は時を追うごとに大きくなっている印象です」。
総務省が5月29日に発表した労働力調査によると、4月の「休業者」の総数は597万人で、比較できる1967年12月以降では、最多を記録した。休業者は、いわゆる「失業予備軍」とされるものだ。