──あなた自身の経験上、今回の選挙で女性への偏見がどう影響すると思いますか?

 女性への偏見を、自分では克服できると思っていました。しかし有権者の一部に、女性に投票することに同意できない人たちがいました。首相や大統領として女性を受け入れられない人が。特に大統領選では、それらの人たちの割合が高いのです。大統領というのは、国家の象徴と政府の代表という点で一人二役の地位だからです。女性が政府をつかさどりかつ国の象徴を務める、ということに違和感をぬぐえない人は多い。無意識な偏見というのがあるのでは、と思います。私が候補だったときも、“女性には投票するけれど、あの人(=私)には投票したくない”と言う人たちがいました。今回も女性候補者に対しての姿勢は同様です。共和党の場合40%、民主党の場合だいたい9%の割合がそういう人たちです。小さい数字と思いたいけれど、選挙の結果が接戦の場合、とても大きな数になるのです。

──前回の大統領選で情報操作や外国からの介入など様々な問題がありました。今は政治に無関心で、投票しない人が増えています。

 私たちは民主主義の危機に直面していると思います。不満を感じ、そのせいで政治に無関心になったり、投票しない人がいます。一方で過激思想に惹かれる人も。今の民主主義は機能していない、つまらない、だから過激思想や大衆主義、国粋主義に向かう人もいる。過激派を支持することで問題は解決できないと思います。だが思慮深い政治家が出現し、民主主義に落胆した人々の関心を得る可能性があるのか、それもわからない。政治に加え、現在の世界はテクノロジーで駆動しています。特にソーシャルメディアで話題になるもの、クリックされるもの、アルゴリズムが優先と決めるもの、過激な発言や政治陰謀などにどう対処するのかが大きな課題だと思います。

──環境問題に関していえば、10代の若者の市民運動が活発化しています。民主主義の在り方は変わるべきだと思いますか?

 環境を保護するため二酸化炭素の排出量を制限すべきだと言えば、石油関連産業が、お金がかかりすぎると言う。他方で即やるべきだと主張する人もいるけれど、どう実現するかそれを考えなければならない。そんな状況から、民主主義の危機が生まれたのだと思います。民主主義への反発や、政治家への不信から生まれた危機です。だから若い世代は声をあげている。グレタ・トゥンベリはその最たる例だと思います。“あなたたち大人は私たちの世界を破壊している。それは受け入れられない。いま行動を起こさなければならない”と。これまで左とか右というような観点で民主主義を考えてきました。それを維持するのが不可能になったということなのかもしれません。政治に無関心になった人たちの関心を獲得し、民主主義に参加してもらうためには、何をすべきなのか。大きな課題だと思います。

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