あの忌まわしき福島第一原発事故から1年を前にして、ある"重要情報"がひっそりと公表されていた。

 原発から20~30キロ離れた地点から、爆発事故によるものと考えられる「プルトニウム241」が初めて検出されたというのだ。放射線医学総合研究所などが、3月8日付の英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」の電子版で報告したものだ。

 このニュースは、翌9日の一部新聞でかろうじて取り上げられていた。

〈福島第一から拡散 プルトニウム241 福島県で確認〉(9日付読売新聞)

 これを読んだ永田町関係者は驚いた。

「最初に海外で発表するなんて、彼らは今度の原発事故も、研究材料にしか思っていないんじゃないか」

 プルトニウムは、粒子が重くて拡散しにくいと言われる。しかし、原発100キロ圏内を調査した文部科学省は昨年9月、「プルトニウム238」を最大値で1平方メートルあたり4ベクレル、「239」と「240」を計15ベクレル検出したと公表した。それに加えて、今回の「241」である。

 同研究所広報課に問い合わせると、「国際的な科学誌で客観的な確認および評価を受けることは、国内の理解を促進するためにも非常に重要と考えています。なお、プルトニウム241は昨年すでに国民に向けて、放出されていたことが発表された放射性核種であり、国内より先に海外で発表された訳ではありません」

 原発から放出されたことと、30キロ離れた地点で実際に検出されたことは明らかに違う。「原子力資料情報室」理事で名古屋大名誉教授の古川路明氏が、こう呆れる。

「微量だといっても、新たな核種が検出されたことは遺憾です。周辺住民のことを考えるなら、本来、まず国内発表すべきです。国が発表してほしくないことを慮(おもんぱか)って、海外で発表になったのではないでしょうか」

 この"隠蔽体質"が国民を危険にさらしているのだ。

※週刊朝日 2012年3月30日号