

半世紀ほど前に出会った98歳と83歳。人生の妙味を知る老親友の瀬戸内寂聴さんと横尾忠則さんが、往復書簡でとっておきのナイショ話を披露しあう。
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■横尾忠則「コロナ禍から芸術のポジティブパワーを」
セトウチさん
寂庵浄土は安全地帯ですが、下界はコロナ禍に掻(か)き廻されて、魑魅魍魎(ちみもうりょう)状態が先ゆき不明のまま日常を汚染し続けています。この書簡はこんな話をする場でなかったはずですが、つい、ここに引っ張り込まれてしまいます。そこでコロナから逃げていても埒(らち)があかないのでコロナと共生するために、1カ月前から、僕の過去の作品に描かれている人物に、「あかんベェと、ベロを出した」僕の60年代に制作したキャラクターを描いたマスクを装着した絵を、美術関係者の友人を中心に、ツイッターで発信し続けています。
そのアートキャンペーンのタイトルを「ウイズ・コロナ(WITH CORONA)」と名づけました。ところが小池百合子東京都知事がこのネーミングをそのまま活用して、僕の作品タイトルとまぎらわしくなっています。本誌「週刊朝日」まで「withコロナ」と言い出しています。その「ウイズ・コロナ」キャンペーンは現在ニューヨークの僕の契約ギャラリーやパリの美術館やミラノのアートジャーナリストからも世界発信をしてくれています。すでに12日現在、約80点の作品が発信されています。セトウチさんのところにもバックナンバーを本日発信しますので、セトウチさんの感想を聞かせて下さい。
展覧会が延期になったり中止になったので、全く別の方法で発信できないかなと考えた結果「ウイズ・コロナ」キャンペーンを発想しました。真正面からコロナ禍を政治的に批判するよりも、作品を通して、いささか嘲笑的に創作する方が、言葉よりインパクトがあるのではないか、と創造が内蔵する笑いとお遊びを味付けしました。セトウチさん的にはチョッとエロティックでもありますよ。