人づきあいや見栄・虚飾は一切なし。明治時代の「簡易生活」は究極のシンプルライフだ。その実態を描いた書籍『簡易生活のすすめ――明治にストレスフリーな最高の生き方があった!』の著者・山下泰平さんは、常々「正社員はつらそう」だと感じているという。その真意とは?
【年収300万円でも3人子持ちのシングルマザーと暮らす就職氷河期世代の男性】
■正社員はパフォーマンスを発揮するのが難しい
僕の本業は、とある組織のシステム管理です。雇用形態は、正社員ではなく、派遣社員。組織に所属してはいますが、そのなかにどっぷり浸かっているわけではないので、一歩引いた視点から働く環境を見ることができます。そのせいか、同僚として働く正社員たちに対して、少しだけ同情的な思いを抱いています。
もっともつらそうだなと思うのが、職場がパフォーマンスを十分に発揮できる環境ではない点です。
たとえば、毎日のように行なわれる会議。そのほとんどは、管理職がパッと決めて指示を出せば済むのに、わざわざ会議を開いて、さらに発言機会のない平社員まで出席させています。その結果、本来なら実務に当てることのできる時間を浪費させられてしまうのです。
一方で、意思決定のプロセスが複雑で曖昧すぎるため、下された決断に納得できないまま働かなくてはならない人もいます。
私の職場でもコロナの影響でオンラインによるサービス提供を行うことになったのですが、若い社員から現実的かつなかなか斬新なアイデアが提案されました。ところが、新しすぎるがゆえに理解できない人が多く、「今は非常時なんだから」と議論もあまりなされず、なんとなくで採用が見送られ、最終的に導入したのは同業他社と横並びのサービスでした。他人の気持は分かりませんが、納得できないって人もいたんじゃないかなと思いました。
派遣で部外者の私は、自分の仕事を減らすため、見付からないように変更しちゃったりすることがあります。もちろん徹底的に調査して検証はしますが、議論の過程がなくても、結果的に良くなれば文句は出ない。ただこういうことをするのも、組織にがっつり組み込まれていると、なかなか難しいところがあるんだろうなと思います。
理不尽に反対の声を上げられない。そして、本来なら発揮できるパフォーマンスを下げられてしまう。それが、正社員の悲しみです。