「従来は、選挙期間やその直前での投票や具体的な選挙運動の対価の供与を買収罪の適用対象にしてきましたが、今回はかなり様子が違っています。時期を考えれば、これまで地盤培養のために行う支持拡大の依頼と受け止められてきた行為を含めているからです。こうしたものを選挙違反の摘発の対象にしているのが異例と言えます」

 そこに今回、手を突っ込んだ意味合いはどこにあるのか。

「選挙や選挙違反の摘発のあり方に今後、非常に大きな影響を与えるでしょう。公職選挙法の趣旨から、買収罪を適用するべきです」

 今後最大の焦点となるのが、買収に使われた金の原資だ。克行議員が一部の町議に「安倍(晋三)さんからです」と現金を渡したこともわかった。前出の郷原氏は一連の金の流れから、自民党側が罪に問われる可能性を指摘する。公職選挙法の「交付罪」の適用があり得るというのだ。

「交付罪とは、供与などの行為が行われるとの認識を持って、資金を交付することです。私自身はかつて検事時代にこの罪で起訴した経験がありますが、今までに事件化された例は大変少ないです。不透明な選挙資金の提供も含めて犯罪になるということを示す意味は非常に大きい。捜査の中で、党本部への家宅捜索も当然、検討の対象に上ってくるでしょう」

 今回の事件は交付罪の構成要件を満たすのか。郷原氏は、具体的な買収先や金額を認識していなくても、案里議員を当選させる目的で「自由に使って良い金」として各方面に配られることを知って資金提供していれば、成立すると考える。

 郷原氏は「ここまで摘発のハードルを下げてやってきた以上、徹底的にいくところまでいかざるを得ないでしょう。もし腰砕けになって終わったら、検察はおしまいです。このタイミングでの官邸との手打ちはあり得ない」と話す。(AERA編集部・小田健司)

※AERA7月6日号では、検察が自民党の立件を目指す背景にある「政権との確執」など、より詳細な記事を掲載している。

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