投資助言会社「フジマキ・ジャパン」の代表を務める「伝説のディーラー」藤巻健史氏が語る。2月27日、半導体のDRAM製造で世界3位のエルピーダメモリが倒産した。また、翌日、パナソニックの社長交代人事も発表された。明言はしていないが今年度の連結純損益が巨額赤字になることの責任を取ったのだとも思われる。日本を代表する企業や産業の衰退が顕著である。その原因は「円高にある」という。

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 一つ間違えてはいけないことは、昨年まで欧米企業と肩を並べていた日本企業が急速に失速して赤字化したり倒産したりしたのではないという点だ。日本企業はずっと儲かっていなかったのだ。日本の企業は欧米企業の10分の1から100分の1しか利益を上げていないのである。

 このような日本企業の業績低迷を、日本の識者やマスコミの分析は「金融危機のせいだ」「日本人の目が外を向いていないせいだ」「経営者の意思決定が遅いせいだ」「研究費に金が回っていないせいだ」「法人税率が高すぎるせいだ」との的外れか枝葉末節なものに終始している。金融危機は世界共通で他国企業も悪影響を受けているわけだし、トヨタも世界を相手に勝負しているし、法人税が高かろうが低かろうが法人税を払う前の段階でも利益額が低いのだ。

 この企業業績の低迷ぶりは、ひとえに円高のせいである。エルピーダの坂本幸雄社長が記者会見で「この1年の為替変動の大きさは、一企業の努力でカバーしきれない」と述べたとおりである。円高を修正しないことには、海外販売で稼ぐ日本企業はさらに壊滅的な状況に陥る。

※週刊朝日 2012年3月16日号