「簡易生活」は、趣味=自分の興味を中心に生きることも推奨しているんです。明治時代の小説家・上司小剣(かみつかさ・しょうけん)も、「人生には趣味と云うことが必要です」(『簡易生活 第二号』)と言っています。年末年始にある虚礼の数々は煩わしいけれど、もし、その風習を自分が愛していて、なおかつ他人に迷惑をかけないのならば「趣味」であるから、どんどん実践すべきであるという主旨の発言です。

 これは僕も賛成です。「趣味」の範囲であれば、ムダに仕事を抱え込んでも、ボールペンを10本以上在庫していても問題ありません。結局、「簡易生活」とは、自分にとって「簡易な生活」を送りつつ、「良く生きよう」とする生活態度のことなのですから。

 シンプルに生きるのは本当に楽で、自分の時間を生み出せます。たとえば僕の場合、毎日のルーティンを決めています。朝、起きたらコーヒーを飲んで、歯を磨き顔を洗います。子供の頃は絶望しましたが、大人になった今では洗顔歯磨きも、なかなか気持ちの良いものだなと感じます。職場に行って仕事をして、昼ご飯は公園で食べ家に帰る。こうやって考えることを減らすことで、「国立国会図書館デジタルコレクション」で明治の資料を読む時間を増やしています。

 私は研究者ではありませんから、古い資料を読み込んだところであまりメリットはありません。ただ面白いだけですが、ここは諦めたくないし、情熱を注ぎ込んでいます。

 面白さを確保するために、仕事を効率化し生活を簡易にしていく。気が向いたら、面白さを人に伝えるために文章を書く。

 こんなことを続けながら、なんだかんだで気楽に面白おかしく生活できています。

 もし、今の生活に息苦しさを感じているのならば、明治時代のシンプルライフである「簡易生活」にひとつのヒントがあるかもしれません。

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