池上:トランプ大統領は失業率が14%台だったのが13%台になって劇的にアメリカ経済は復活しつつあると言っていますが、失業率の調査を見ると、手厚い手当に頼り求職活動をしなかった失業者の3ポイント分が欠落しているんです。そのため失業率が一見低いように見えるが、実際には失業率はむしろ高くなっている。経済の深刻な状態が見えなくなっているのが現在の状況だと思います。

佐藤:株価至上主義の限界がきているということです。本来資本というのは持っているだけで増えるものではないのに対して、株というのは持っているだけで増えるという特殊な商品です。マルクスの資本論では擬制資本、架空資本などと表現されています。砂上の楼閣みたいなものなんですよ。株価だけで経済を評価していて実体の経済を見ていないと大変なことになるでしょうね。

 それから消費活動に欲望の変化が出ています。今回の自粛期間に多くの人たちから、お金をかけなくても意外とやっていけると聞きました。私が東京拘置所にいた時の感覚にちょっと近いんです。ボールペン1本59円だけど、芯がなくなると替え芯が48円だから、11円が惜しくて替え芯を買うんです。このように欲望が小さくなってくことが全体で生じていると思いますね。これが消費活動にどう影響を与えるか。GDPは落ち込むんだけども、意外と消費水準は下がっていない。

池上:だから(所有するのでなく誰かと共有する)シェアリングエコノミーなり、あるいは(フリマアプリの)メルカリみたいなものが広がってくと、GDPが実際の経済活動を反映できなくなっていきます。GDPでは世界のそれぞれの国の経済の実態が見えなくなっているという問題が起きますよね。

(司会・二階堂さやか)

>>【後編へ続く】

週刊朝日  2020年7月10日号より抜粋