近年にないほど世間の注目を集めたプロ野球開幕。ユニホームと野球帽姿で躍動する選手たちが、希望を与えてくれた。その野球帽、実はけっこう変化が激しいこと、ご存じですか。コラムニスト・綱島理友さんが、AERA 2020年7月6日号で球界の変化を映す奥深き野球帽の世界に誘います。
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19日、コロナ禍で延期されていたプロ野球が開幕した。あらゆる意味で歴史的な今シーズン、東北楽天ゴールデンイーグルスと千葉ロッテマリーンズがデザインを変えた帽子で臨む。
帽子の変遷は各球団の歴史そのもの。戦績、本拠地移転、合併や身売り──。「あまり興味が無い」という人には、お題を一つ。昭和の天才、手塚治虫と岡本太郎が関わった帽子がそれぞれ二つずつあるので、ぜひ探してみてほしい。
意外に思うかもしれないが、「ゲーム中、野球帽をかぶらなければならない」というルールはない。一部、高校野球の高野連などがローカルルールで帽子着用を規定しているケースもあるが、MLBや日本のプロ野球が採用する「公認野球規則」には、選手に帽子をかぶることを義務付ける記述はないのだ。
ちなみにユニホームの項目には、「チームと同一のユニホームを着用していない選手は、ゲームに参加できない」という規定がある。これを言葉通りに解釈すると、一人だけ帽子をかぶらないのはルール違反だが、チーム全員が無帽なら、試合出場も可能と考えられる。
しかし野球で帽子をかぶらないチームはない。プロもアマチュアも、アメリカも日本も選手は必ず野球帽をかぶっている。
なぜ、野球選手は帽子をかぶるのか?
アメリカで、何人もの野球関係者にこの疑問をぶつけてみた。球団関係者、野球殿堂博物館の学芸員、MLBに野球帽を供給するニューエラ社の社長に至るまで、多くの人が異口同音に、その理由として答えてくれたのが「伝統だから」だった。
野球の歴史の中で最初に使用された野球帽は、現在とは違う形だった。