作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。今回は、日韓のフェミニストの女性たちと開いたオンラインシンポジウムについて。合法的にポルノを製作する日本とそれに影響を受けた韓国の性表現の実態を語り合い、問題の根深さをあらためて実感したという。
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先日、韓国のフェミニストの女性たちとオンラインシンポジウムを開いた。ハンギョレ新聞記者イ・ユジョンさん、「性売買問題解決のための全国連帯」のイ・ハヨンさん、日本からはエトセトラブックスの松尾亜紀子さんと私だ。日韓合わせて200人が参加するイベントになった。
そもそものきっかけは、去年、韓国のハンギョレ新聞が主催するフェミニストメディア「Slap」で、性産業に関する取材を受けたことだ。韓国の性文化は日本の性産業の影響を強く受けている。顕著なのは、AVだ。ポルノ製作が法律で禁止されている韓国で、合法的にポルノを製作する日本は“性の先進国”を意味する「性進国」と呼ばれている。多くの世代の男性が「いや、いや」とか「アヘガオ」とか、AVで使われる日本語を知っており、性表現に関して日本のAVが与える影響は決して小さくない。
そんな状況をフェミとしてどう考える? そんなインタビューから始まり、次回は韓国の状況を聞かせてね……という約束がコロナの影響でなかなかかなわなかったため、オンラインでイベントやっちゃおう! ということになったのだった。
「不思議の国の女たち-私たちはつながるほど強い-」。タイトルはイ・ユジョンさんが考えてくれた。性産業に従事する女性を見下し差別する一方で、男性の性にはとことん甘い「不思議の国」である日本と韓国で、フェミが共に語りつくせばきっと次の希望が見えてくる。そんな思いだ。「性売買問題解決のための全国連帯」のイ・ハヨンさんは、借金や甘言で性産業に巻き込まれる女性たちを支えてきた。「男が性を買う」のが当たり前とされる「文化」で、男性の需要を減らしていくための活動をしている。