韓国では今年、n番部屋事件(※)が大きく報道された。女性たちをグルーミングし支配し、まるで彼女たちが自主的に性的表現をしているかのようにコレクションしていたサイトの管理者らが、デジタル性暴力犯罪として起訴されたのだ。グルーミングとは、文字通りペットをかわいがるように「エサを与え、居場所を与え、毛繕いをし」、信頼させて「飼う」行為だ。加害者との信頼関係が築かれてしまうので女性たちも自分たちが被害者だと気がつくのに、時間がかかる。女性を「奴隷」と呼び、ゲームのように彼女たちを支配するこのn番部屋事件をきっかけに、韓国では性犯罪の刑法にあった13歳の性的同意年齢が16歳に引き上げられることになり、デジタル性暴力によりセンシティブな社会の空気がつくられた。
一方、日本はどうなのだろう。緊急事態宣言以降、世界的にポルノの需要が増えている。そのためか、AV産業による被害の声がここ数カ月増加傾向にある。「何年も前に出演したAVがネットに出回っている。なんとか消せないか」という必死の声が増えているのだ。それらはもちろん「合法的」に撮影され、「合法的」に流通しているものである。
でも、いったい「合法」と「非合法」の間は、誰が決めたのだろう。韓国の話を聞いていると、そのような気持ちにもなるのだった。
なぜなら、n番部屋事件で「表現」されていた性や、被害の実態は、日本のポルノ産業で起きていることと大きく違わないからだ。痴漢、盗撮、レイプ(実父から娘へも含む)、幼女虐待という「性表現」や、女性のおなかを殴ったり、圧縮袋に入れたりして苦しむ姿の「表現」の数々。女性たちをグルーミングし、「そこにしか居場所がない」と思わせる洗脳もよくあること。女性の身体や情報を支配し搾取する表現物が合法的に流通する社会と、違法なのに次々に湧いて出る社会……。どちらにしても、レイプカルチャーが根深く浸透していて、男性の性意識や性文化に深く影響を与えているのではないか。