「仕事がなくなっている」
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こうこぼすのは、大手旅行会社で営業職を務める男性(34)だ。コロナの感染拡大で海外からの旅行客や国内の学校の修学旅行など団体客が一斉にキャンセルし、例年の稼ぎ時を逃した。その後も申し込みがない状況は続く。
「今の厳しい経営状況が続けば、営業店の再編や人員の整理を余儀なくされるでしょう。コストのかからないオンラインを通じた販売はこれから加速度的に増えていくでしょうね」
仕事を求めている人に対してどれだけ企業の求人があるかを示す有効求人倍率は、5月は1.20倍と、4月から0.12ポイント下がった。第1次石油危機後に次ぐ46年ぶりの下げ幅だ。
株式アナリストの鈴木一之さんは「コロナ後は支出から何から、日常生活をすべて見直すトレンドが続くでしょう」とにらむ。
「世の中全体が簡素になり、デジタル化も一気に進む。AI導入や自動化、無人化、ロボットの導入も加速すると思います」
経済評論家の加谷珪一さんもこう解説する。
「コロナの影響が直撃している業種は、ここ10年の間の技術の進展や社会構造の変化に伴って、もともと改革が求められていた。不合理で非効率なものがコロナで一気に顕在化し、変化に対応できなければ、消えざるを得ない」
典型例が、在宅勤務やオンラインを通じた会議や営業など。今まで導入する企業は限られていたが、コロナをきっかけに実際にやってみて、その便利さに改めて気づかされた人は少なくないはずだ。これまで改革や見直しの必要性が指摘されながらも、習慣や慣習などに縛られ温存されてきたものは、この先、見直しが進む可能性が高い。
加谷さんは、弁護士や会計士、医師など、これまでエリートとされた職業が危ないと指摘する。
「弁護士の仕事の多くは、過去の判例を調べたり、分厚い契約書に書かれた文言を細かく確認したりする地道な作業。弁護士を補助するパラリーガルを含め、デジタル化が進めば、作業の多くがAIに取って代わられる可能性が高い」
都内に住む30代の弁護士は、緊急事態宣言中、新規の顧客や相談案件が激減したという。
「裁判所では、人身保護や家庭内暴力(DV)、倒産といった緊急を要する案件以外は期日取り消しとなり、多くの裁判が休廷になりました。弁護士の数は増えていますし、中小企業などはお金の余裕がなくなっているので顧問料で稼ぐ『先生』的な従来のスタイルは続かないでしょうね」