インターネット広告で「妊娠12週まで待てば5万円」と格安で中絶手術ができると宣伝し、全国から中絶希望の女性を集めている病院がある。12週以降の中絶手術はリスクが高いため、国会で問題になり、医師会も指導に入っていた。格安中絶手術のカラクリを、病院の元職員らが告発した。
2018年に日本で実施された人工妊娠中絶手術は約16万件。同年の出生数が約92万人なので、妊娠した人の約7人に1人が中絶を選択していることになる。
背景には望まない妊娠や経済的な問題など、さまざまな理由がある。女性にとって中絶は重い決断だ。ところが、そのような女性に対し、危険な中絶手術に誘導している医師がいる。
神奈川県内にあるX産婦人科は、表向きはどこにでもありそうな病院だ。ホームページには、中絶に関する記述はない。しかし、実態は異なるという。
神奈川県内の産婦人科医は言う。
「X産婦人科では、公式ホームページとは別に中絶専用のホームページを持っています。妊娠12週以降の中絶手術が『5万円』というインターネット広告も出し、全国から中絶希望の女性を集めているのです」
12週以降の中絶手術は母体へのリスクが高まる。中絶手術が実施できる母体保護法指定医に向けて制作された『指定医師必携』(日本産婦人科医会)には、12週以降の中絶手術の危険性についてこう書かれている。
<中絶による母体障害率は、妊娠12~15週における中絶が最も高い>
<妊娠初期の中絶に比して事故の頻度が高いので注意する。できるだけ中期中絶にならぬような指導が大切である>
前出の医師は怒りを隠さない。
「12週以降の中絶手術は、子宮を傷つけて次の妊娠・出産に影響する可能性があります。中絶時期を遅らせるように誘導することは、医師として許されない行為です」
この医師の言うとおり、グーグル検索で「中絶」とキーワードを入れると、検索結果の上位にX産婦人科の広告が出てくる。
広告には<保険証を使える無痛中絶手術><妊娠12週まで待てば5万円><12週から保険証で割安に>とも書かれている。
なぜ、12週以降の中絶手術が割安なのか。