神奈川県内にあるX産婦人科では、インターネット広告で「妊娠12週まで待てば5万円」と格安で中絶手術ができると宣伝し、全国から中絶希望の女性を集めていた。12週以降の中絶手術は母体へのリスクが高まるため、危険性が指摘されているにもかかわらずだ。
【前編/「“格安中絶”のカラクリ ネット広告で危険な手術へ…元職員が告発」】より続く
この問題は、昨年11月に国会の参院厚生労働委員会でも取り上げられた。質問したのは、医師の資格を持つ梅村聡参院議員(日本維新の会)。梅村氏は、厚生労働省にこう質した。
「多くの産婦人科のホームページは、12週から後は中期中絶なので体に対する負担が重いと書いてある。(X産婦人科は)そういうことではなくて、経済で(12週以降の中絶に)誘導していく。(中略)母体保護法上の違反になるのか」
これに対して厚労省の担当者は、X産婦人科の記述が「ただちに母体保護法違反ということはできない」との認識を示した。梅村氏は言う。
「これは制度の穴をついた問題のある医療行為です。12週以降に中絶手術を延ばして出産育児一時金を得ることについて、国民の命と健康を守るべき厚労省が法律違反だと断言しないから、こういった広告が広まっているのです」
中絶手術を実施する医師は、各都道府県の医師会から母体保護法指定医の認定を受けなければならない。国会で問題が取り上げられたことで、神奈川県医師会がX産婦人科に調査に入った。そのことは、日本産婦人科医会の会報「JAOGnews」20年3月号で、県医師会の関係者の発言としてこう書かれている。
<国会でも問題となった出産育児一時金取得目的で妊娠12週以降の中期中絶を多数施行する施設について現在調査を行っており、指定資格停止等の処分を検討している>
県医師会の関係者によると、X産婦人科には今年1月までに複数回の指導が入ったという。その後、X産婦人科の中絶専用のホームページからは、12週以降の中絶手術に誘導するような記述は削除された。