医療機関による広告は、厚労省の「医療広告ガイドライン」によって規制されている。不当な広告によって患者が身体的な被害を受けた場合、ほかの商品やサービスに比べて消費者の損失が大きいからだ。
12週以降の中絶手術に誘導するかのような広告に問題はないのか。
厚労省は「個別の事案については回答できない」としたものの、「人を誤認させる広告」が禁止されていることを例に、12週以降の中期中絶に誘導する広告は「ガイドラインに抵触する可能性がある」と回答した。
そこで本誌は、X産婦人科のA院長に取材を求めた。面会での取材は拒否されたが、A院長はメールで回答。問題となっている「妊娠12週まで待てば5万円」の広告については、出産育児一時金の制度を知らせることが目的だったが、本誌の指摘を受けて現在は削除したという(下記、一問一答参照)。
医師の職業倫理を示した「ヒポクラテスの誓い」には、こう書かれている。
<養生治療を施すに当たっては、能力と判断の及ぶ限り患者の利益になることを考え、危害を加えたり不正を行う目的で治療することはいたしません>
目先の利益になびく医師を増やさないためにも、新たなルールづくりが急務だ。(本誌・西岡千史)
■A院長との一問一答
──グーグルの広告では「妊娠12週まで待てば5万円」と書いている。出産育児一時金制度の趣旨に反し、12週以降の中絶に誘導しているのでは。
患者の中には経済的に困っている方もおり、出産育児一時金の制度をお知らせする趣旨で掲載していました。しかし、県医師会から指摘を受け、当院のホームページを修正することになりました。そのほかの当院の広告で修正が未了だったものがありますが、現在、修正を完了しています。
──「妊娠15週まで日帰り可」とも書かれている。
妊娠15週までの患者に対しては、術後の経過を観察のうえ、問題ないと判断した場合はその日のうちに帰宅することを許可しています。反対に、入院をお願いする患者もいます。「妊娠15週まで日帰り可」というのは、必ず何日か入院が必要になると考えている患者に、必ずしもそうとは限らないということをお伝えする趣旨です。