東京で感染者数200人を超える日が続いている。そんななか、感染拡大の中心とされる新宿区のPCR検査の陽性率が、5月の連休後から跳ね上がっていることがわかった。医療機関や医師が危機感を募らせる。AERA 2020年7月20日号で掲載された記事を紹介。
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都内の病院に勤務する女性医師が院内の様子をこう語った。
「今回こそ本物の波が来るかもしれないという雰囲気は漂っています」
この病院でもいったんは感染者がいなくなったが、6月下旬からまた受け入れが出始めた。7月6日以降、患者と接する際に医師と看護師は白衣の上に防護衣とフェースシールドを必ずつけるようにした。診察室の中の机や椅子を次亜塩素酸水で消毒する回数も、決められた時間だけではなく、できるだけ多くするようにするなど、「個人的な“警戒レベル”も上げています」(医師)。
安倍晋三首相が緊急事態宣言を解除したのは5月25日。東京都ではその後、6月19日にかけて段階的に都民への自粛要請を解いてきたが、とたんに感染者は増えた。
7月8日までの1週間平均で、新たな感染者数は108人に上り、約4割にあたる43.7人は感染経路が不明だ。新規の感染者数だけをみれば、緊急事態宣言が出された4月上旬ごろと同じ水準だが、今の状態をどう考えればよいのか。
東京都医師会副会長で、東京都新型コロナウイルス感染症対策審議会の会長を務める猪口正孝さんはこう説明する。
「感染症の流れは『ハンマー&ダンス』といって、自粛要請など(ハンマー)が効果を発揮して第1波が収まったとしても、その後感染者数が波を打つように上がったり下がったり(ダンス)します。現在の状態が第2波ではなく『ダンス』であることを祈っています」
感染の発生源としてやり玉に挙がるのは「夜の街」だ。中でも新宿・歌舞伎町や池袋は、小池百合子知事らから名指しで危険性を指摘されている。本当にこれらの場所のリスクが突出しているのか。東筑紫短期大学の釘原直樹教授(社会心理学)は、「一般論」としてこう指摘する。