さらに、安倍政権だからこそ心配になることが二つある。まず、敵の動向を探るうえで、衛星写真や暗号解読などだけではなく、韓国の人的なネットワークを使った情報が極めて重要になるが、安倍政権下では韓国の協力を得ることはできない。
次に、危険なのは、米中対立の激化だ。敵基地攻撃の議論は、実は、安倍政権の仮想敵国である中国を念頭に置いたものだ。今、世界の賢者たちが、台湾有事から米中戦争というリスクを真剣に語り始めている。そうなったとき、在日米軍基地は対中戦争の前線基地になる。トランプ大統領は、日本に「集団的自衛権」を発動して参戦せよと言う。一方、日本が中国を攻撃するミサイルを保有しているから、中国は反撃態勢を整える。そこで、トランプ大統領が安倍総理に「中国が日本攻撃の準備に着手したぞ。日米の自衛のためにミサイルを撃て」と言ったら、安倍総理は簡単にその言葉に乗るだろう。それこそ安倍総理の悲願かもしれない。
こんな危ないことについて「検討」することすら馬鹿げている。言葉が変わっても騙されてはいけない。自民党は「北朝鮮が!」「中国が!」と危機感を煽るだろうが、そんな脅しに負けてもいけない。国民は「敵基地攻撃能力保有論」を断固拒否すべきだ。
※週刊朝日 2020年7月24日号