プレミアリーグは「メディア王」マードック氏が有料チャンネルの目玉コンテンツとして当時の一部リーグから人気チームを引き抜いて設立し、世界的なスポーツ放映権料高騰の流れを生んだ。海外スポーツビジネスに詳しい帝京大学の川上祐司教授は「プレミアリーグは外国人枠がなく、選手の75%が外国人選手で世界中で試合が視聴されていることもコンテンツの価値を高めています」と説明する。

 スポーツマーケティングが専門の大阪体育大学の藤本淳也教授はこう解説する。

「世界的なスポーツイベントが各国で高い視聴率を得られる強いコンテンツだということに加え、デジタル化が進む中で映像のコンテンツホルダーの価値が高まっていることが背景にあります。試合を中継する以外に、映像の権利を持つことでアーカイブ映像をネットに公開するなどコンテンツの活用が広がり、再生回数という視聴率とは別の指標が数値化されて新たなマーケットが生まれています」

 テレ朝とAFCの契約も1局で負担できる規模を超える可能性が高く、これが「やべっちF.C.」終了が検討される背景にあるとみられる。放映権料の高騰によって、18年W杯ロシア大会ではテレビ東京が中継から撤退した。AFCとの契約の行方によっては、ネット配信などの有料メディアでしかサッカー日本代表戦が見られない日が来るかもしれない。

 例えばDAZNは通常月額1750円(税抜き)だが、テレビで見るにはネット環境やネット接続のできるテレビを整備できる経済的余裕が必要だ。川上教授によると、イギリスでは96年に「スポーツはすべての人のものである」として、五輪やサッカーの国際大会など重要なスポーツイベントの独占放送を規制。誰もが自由に情報にアクセスできる「ユニバーサルアクセス権」も保障しているという。

「やべっちF.C.」はこれまで試合の映像を流すだけでなく選手の人間性も積極的に伝え、サッカーファンのすそ野を広げてきた。もし番組が無くなれば、視聴料を払ったごく一部の人以外にとっては日常的にサッカーに触れる機会が減ってしまう。前出の藤本教授は言う。

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