慶應義塾大学大学院准教授 小幡績(おばた・せき、52)/大蔵省(現・財務省)、一橋大学経済研究所専任講師などを経て現職。新型コロナの問題ではメディアやブログを通じて政府の対応や国民の反応に次々と疑問を投げかけている
慶應義塾大学大学院准教授 小幡績(おばた・せき、52)/大蔵省(現・財務省)、一橋大学経済研究所専任講師などを経て現職。新型コロナの問題ではメディアやブログを通じて政府の対応や国民の反応に次々と疑問を投げかけている
この記事の写真をすべて見る

 新型コロナウイルスの対応で、国の借金にあたる国債の追加発行額が過去最大を記録した。小幡績・慶應義塾大学大学院准教授は第2波が懸念されるなか、国の財政破綻に危機感を募らせる。「ばらまき」ともとれる支援のあり方を見直すべきだという。AERA 2020年7月27日で掲載された記事から。

*  *  *

 経済か感染制御か。そんな議論を、元大蔵(現・財務)官僚で、歯に衣を着せない発言を繰り返す慶應義塾大学大学院の小幡績准教授は一蹴する。

「大げさに二択を迫るほどの問題ではないでしょう。個人でできる感染防止の対策を普通にやればいいのに、それを徹底する前から完全ロックダウンとか、完全に緩和するとかいうバカバカしい究極の選択に持っていく必要はまるでない」

 小幡さんはそもそも、日本では政府に感染症を抑える力が与えられていないと考えている。

「要は、マスクをしろ、手を洗え、家にいろって言っているだけじゃないですか。それ以上のことはできないわけです」

 だとすると、あえて「経済か感染制御か」を問うなら政府にできるのは経済対策だけとなる。できない感染症対策を行うと、間違いも起きてくる。小幡さんは続ける。

「金をばらまき過ぎです。休業したらお金を支給するなんて、おかしいでしょう。社会を安全にして、みんなで安全に暮らしたいですよね。じゃあみんなで自粛できるところは自粛しましょうねって言うと、なぜ『金をよこせ』ってなるんですか。補償は何か悪いことをしたときに支払うべきものです」

 コロナ対応としては、政府は第1次で総額25兆7千億円、第2次では総額31兆9千億円の補正予算を編成した。財源は国の借金である国債の追加発行頼りで、今年度に新たに発行する国債の額は、過去最大の90.2兆円にも膨れあがる。

 感染が拡大しつつある今、再度の緊急事態宣言が必要かどうかの議論はさておき、政府側にはそう簡単に宣言を出せない理由がこの財政事情にある。

次のページ