コロナ禍でスポーツの大会や文化系イベントが中止となり、子どもたちの笑顔が失われた2020年の夏。そんな中、小さなバレーボーラーたちの笑顔を取り戻すため、バレーボール界で一人の選手が声をあげた。その発起人は、元バレーボール日本代表で現在はビーチバレーボール選手として活動する越川優。初の試みとなる自主イベント「Yu Me~夢~バレーフェスタ2020」の企画、開催までの舞台裏に迫る。
・中学3年の夏は今しかない
越川の心が動いたのは、今回が初めてではない。震災や豪雨など災害が起きるたび、越川は自らのネットワークを活かし、先頭に立ってきた。東北の被災地を長年に渡って訪問し、高校生をVリーグの試合に招待して元気づけた。西日本豪雨のときは他スポーツの球団の選手とタッグを組んで募金活動も行った。また熊本地震後は、自らがメンバー選考から漏れたリオデジャネイロ五輪最終予選の会場で募金の手伝いをした。なぜ越川は、ことあるごとに行動を起こしてきたのだろうか。
「僕自身は、被災地の方に少しでも元気になってもらいたい。そのために自分のできることがあれば、時と場所にはこだわりません。今回はイベントの準備で時間を割かれるので、ビーチバレーボールの練習時間も減りました。でもビーチに転向してずっと目指してきた東京オリンピックが1年延期になって、国内ツアーも9月に延期。この時点で自分がいまやるべきこと、自分が力になりたいと思ったのは交流イベントの開催だった。中学3年生にとっての夏は今しかないですから……」
・主役は中学生、自分は裏方
その想いひとつでイベントの企画が始動した。まずは自らのSNSで中高生のバレーボーラー、指導者、関係者、保護者の方に向けて「何がしたいか? 何をしてほしいか?」という意見を募集。ダイレクトに届いたたくさんの声と緊急事態宣言解除後に出されたスポーツ大会開催のガイドラインを守る前提で、イベントの内容、規模などを練っていった。