参院外交防衛委で敵基地攻撃について答弁する河野太郎防衛相。定義について「個別、具体的に判断する」と述べるなどあいまいさが際立つ (c)朝日新聞社
参院外交防衛委で敵基地攻撃について答弁する河野太郎防衛相。定義について「個別、具体的に判断する」と述べるなどあいまいさが際立つ (c)朝日新聞社

 敵がミサイルを撃つ前に基地を叩く能力を備えるべきだとの議論が自民党で急浮上した。だがイラク戦争で米英軍が失敗するなどハードルは高く、憲法上も許されない。AERA 2020年8月3日号では、様々な問題をはらむ「敵基地攻撃能力の保有」の議論に迫った。

【写真】米ハワイ州カウアイ島にあるイージス・アショアの実験施設はこちら

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 地対空迎撃システム「イージス・アショア」の配備断念を受けて、「敵基地攻撃能力の保有」の議論が急浮上した。閣議で決めた大型兵器の導入をやめること自体が極めて異例だが、その穴埋めに「守るより攻めろ」というのでは、議論があまりにも乱暴ではないだろうか。

 配備停止を発表した河野太郎防衛相は昨年9月、防衛相に就任した直後から「無駄撲滅」を掲げ、米政府の言い値で買わされる対外有償軍事援助(FMS)による兵器購入の中身について見直しを指示していた。

 そのFMSで購入する兵器のひとつがイージス・アショアだった。米政府に支払う費用は4664億円。迎撃ミサイルは別料金なので総額8千億円を超える。5月になって迎撃ミサイル推進装置のブースターを安全に落下させるには、さらに2200億円の改修費と12年の期間が必要と判明し、コストと期間の両面から河野氏の停止表明につながった。

 だが、それだけではない。見直しが進んでいた秋田市の新屋演習場に代わる候補地について、再調査結果は棚上げされ、公表されていない。

 防衛省幹部は「国有林が適地となる可能性があった。森林を伐採して施設を整備するのにまた費用がかかる。秋田が断ったものを引き受ける自治体があるはずもない。配備までに河野大臣は何回、頭を下げるのかとなった」と話す。

 導入決定の経緯を振り返ると、白紙撤回で終わるのは容易ではないことがわかる。

 2017年2月10日、安倍晋三首相は就任して間もないトランプ米大統領とワシントンで最初の首脳会談に臨んだ。この会談から5日後の参院本会議で、首相はトランプ氏から迫られた米国製武器の追加購入を表明している。

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