それでも、状況は変わりつつある。加藤理事長によれば、元日に戦車部隊を視察した金正恩に対し、住民たちが「若い金正恩が戦争をしようとしているのではないか」と呼び捨てで批判をする光景も見られたという。朝鮮労働党の機関紙が社説で「党と人民の最高領導者」と呼ぶなど神格化が進む金正恩だが、それだけで民心をつかめるほど現実は甘くないようだ。前出のAさんはこう語る。

「住民の半分くらいは、もう体制のおかしさに気づいている。中国との貿易で韓流ドラマのDVDなど海外の商品が手に入るようになった上、中国製の携帯電話で脱北者と国内の家族が通話することで、情報も入るようになった。配給もなく、多くの人が闇市場での物々交換で生きているので、政府をあてにしていない」

 中朝国境を流れる豆満江(トマンガン)では、近年警備が厳しくなり途絶えがちだった脱北者が、再び増え始めているという。「半島の春」の到来は近いのか--。 (本誌・小泉耕平)


週刊朝日

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