

経済学者で同志社大学大学院教授の浜矩子さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、経済学的視点で切り込みます。
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四・三・二。現下の欧州連合(EU)事情を眺めていたら、この三つの数字が頭に浮かんだ。すなわち、「北欧ケチケチ四人組」、「南欧ラテン系三人組」、「東欧国粋二人組」だ。
7月21日、新型コロナウイルスによる打撃からの復興に向けた共同基金についてEU27カ国が合意した。4日間におよぶマラソン協議を経て、総額7500億ユーロ(約92兆円)の復興基金創設で話がまとまった。関係者たちは、協議が決裂することなく合意にいたったことを大いに自画自賛している。だがそもそも、決裂も視野に入れておかなければいけなかったところが、情けない。
協議がもつれる中で、上記の四人組と三人組の対立が鮮明になった。四人組がオランダ・オーストリア・スウェーデン・デンマークだ。三人組はイタリア・スペイン・ギリシャである。コロナの打撃が大きかった三人組は、基金の原資をEU共同債で調達すべしと主張した。基金からの支援金は、もっぱら返済義務無しの贈与にしてくれとも要請した。このいずれに対しても、四人組が強い拒否反応を示した。
最終的には、共同債についても返済不要補助金についても、それなりの折り合いをみた。だが、そこにいたるやり取りは、相当にけんか腰のものだった。