けんかの爪痕が残ってもいる。四人組は、共同債の発行は今回限りだとしている。これがEUの財政統合につながることは断固許さない構えだ。支援金の払い出しについても、四人組の要求で、国々に拒否権が付与された。被支援国が怪しげなカネの使い方をしている。そう見た国は、払い出しに待ったをかけられることになった。三人組への四人組の不信感は深い。
別の角度から基金合意に影を落としたのが、東欧国粋二人組である。ハンガリーとポーランドだ。EUの行政機関である欧州委員会は、基金からの受益要件として、民主主義と法の支配の順守を明記したかった。だが、国粋二人組の抵抗によって、この要件は極めてあいまいなものにとどまってしまった。
まとまったことを祝うのか。内なる亀裂の露呈を嘆くのか。統合欧州の対コロナ復興基金は、なかなか評価が難しい。
浜矩子(はま・のりこ)/1952年東京都生まれ。一橋大学経済学部卒業。前職は三菱総合研究所主席研究員。1990年から98年まで同社初代英国駐在員事務所長としてロンドン勤務。現在は同志社大学大学院教授で、経済動向に関するコメンテイターとして内外メディアに執筆や出演
※AERA 2020年8月10日-17日合併号