千鳥の大悟(左)とノブ(C)朝日新聞社
千鳥の大悟(左)とノブ(C)朝日新聞社

 千鳥の勢いが止まらない。現在の彼らは『テレビ千鳥』『相席食堂』『チャンスの時間』といったお笑い要素の強い番組から『クイズ!THE違和感』『華丸大吉&千鳥のテッパンいただきます!』のようなゴールデン・プライムタイムの大衆的な番組まで、幅広いジャンルのレギュラー番組に出演している。

【写真】千鳥・大悟が師匠と尊敬する人物はこちら

 特に、司会業もこなすノブの活躍ぶりが目立つ。『林修のニッポンドリル』ではサブMCを務め、『ぐるぐるナインティナイン』ではゴチメンバーとしてレギュラー出演している。

『クイズ!THE違和感』で行われた、ノブの顔を合成した有名人の正体を当てる「ノブ違和感」という企画が大反響を巻き起こしたのも記憶に新しい。

 ノブの存在が世間一般に認知されたのは「クセがすごい」というフレーズが広まった2016年頃だろう。それまでの千鳥は「満を持して東京に出てきたもののくすぶっている芸人」として知られていた。

 東京に進出した途端にレギュラー出演していた『ピカルの定理』が終了するなど、常に逆風にさらされてきた。ノブが番組の企画で芸名を「ノブ小池」に変えられるという明らかな迷走もあった。

 だが、そこから千鳥は見事に這い上がってきた。その根底にあるのはもちろん、2人の芸人としての圧倒的な実力である。ただ、それに加えて、ノブがテレビタレントして一皮むけたことが大きかったのではないかと思う。

 もともと大悟は笑いに対するこだわりが人一倍強く、見た目も芸風もデビュー当時からほとんど変わっていない。毎晩のように酒を飲み、タバコを吸い、ときには女遊びもする、絵に描いたような芸人気質の人間だ。

 初めから「完成品」だった大悟に対して、ノブは一歩一歩着実に成長を続けてきた。初期の千鳥は、大悟の独創的なボケに対してノブのツッコミがやや平板な感じがあった。

 だが、東京に出てきたあたりから、ツッコミのやり方が少しずつ変わった。具体的に言うと、例えの切れ味が増して、言葉の勢いが強くなった。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら
次のページ
いまや日本一の「クセツッコミ」の使い手に