人生はみずからの手で切りひらける。そして、つらいことは手放せる。美容部員からコーセー初の女性取締役に抜擢され、85歳の現在も現役経営者として活躍し続ける伝説のヘア&メイクアップアーティスト・小林照子さんの著書『人生は、「手」で変わる』からの本連載。今回は、ついつい盛り上がってしまう他人のうわさ話や悪口に加わらないほうがいい理由をお伝えします。
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私はいまでもそうですが、バラバラの個性を集めるのが好きです。個性が連携して、新しいものを生み出すときのパワーが好きなのでしょうね。でも、そうすることで何かがマイナス方向に向かう兆候をキャッチしたときは、野放しにしていてはいけません。その状態を放置すると、負の空気が全体を侵食していくからです。
メイクアップスクールの校長をしていたときの話です。どうしても私のところで働きたいという女性を、私が引っ張ってあげたことがありました。
とてもエネルギッシュな女性。皆に私への忠誠心をアピールし、私がメイクの仕事で著名なタレントや歌手の元に出かけるとなれば、いつでもどこでもついてくるようなひとでした。しかし表でエネルギー満載のひとは、裏でもエネルギー満載ということもあるのです。
あるとき、密告を受けました。
「小林さんのことをとても尊敬していると言いながら、あのひとがどんな噂をバラまいているかご存知ですか?」
「私は、何も知りません」
「小林さんの悪口で何時間もしゃべり続けているのです」
私はそこで、その密告してきた彼女にツッコミを入れたかった。
(ってことは、あなたも、何時間も悪口につきあっていたのよね)
でも話を先に聞くことにしました。
「で、彼女はなんて?」
「小林さんにいい仕事を盗られたって。彼女を気に入ってくれていた著名人のメイクの仕事を、小林さんが取りあげたって言いふらしています」
その出来事の真相は、その著名人ご本人から「彼女は自己アピールが激しすぎるから、担当を変えてほしい」というご依頼があったから、です。それまで私の一番弟子と大っぴらに名乗っていたひとが同時に私の悪口を流布していたとは、さすがの私もショックを受けましたが、これもいい教訓になりました。