スポーツのやり過ぎで起こるスポーツ障害は、からだが未成熟な子どもにも発症します。くり返す痛みで思い切りスポーツができないことは、子どもにとっても親にとっても大きな悩みです。成長期のスポーツ少年・少女に起こりやすい「オスグッド病」を中心に、その予防、治療、注意点について、日本スポーツ医学財団理事長の松本秀男医師に聞きました。
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成長・発達期にある子どもたちにとって、スポーツを通じて健康な心とからだを作ることはとても大切です。しかし、大人とちがってからだが未成熟な子どもたちは、スポーツのやり過ぎにとくに気をつけなくてはなりません。
みなさんのなかには、からだが急に大きくなる過程で子どもに成長痛が起こることがあり、それは大人になれば自然に治るものだと考えている人がいるかもしれません。しかし、じつは成長痛という医学的病名はなく、成長期に多くみられる痛みを俗にそう呼んでいるにすぎません。実際、その成長期の痛みの原因のほとんどは、軟骨の障害にあるのです。
成長期の骨には、伸びたり太くなったりするために骨の端に成長軟骨と呼ばれる軟骨層があります。 X線写真ではこの部分が細い隙間として見えるため、「骨端線」と呼ばれ、俗称を「成長線」ともいいます。大人になると軟骨が骨に置き換わるため、骨端線はなくなります。成長期の関節では、スポーツなどの強い外力によってこの弱い部分である骨端線やその周囲が損傷する場合があり、それが痛みの原因となります。たとえば、ひざの「オスグッド病」や、かかとの「シーバー病」などがその例です。また、ひじの骨に過剰な負荷が加わり、その影響で軟骨まで損傷する「離断性骨軟骨炎」などもあります。
「オスグッド病」は、10~15歳の子どものひざに多く発生するスポーツ障害です。正式には「オスグッド・シュラッター病」と呼ばれ、1903年にこの病気を発見した2人の医師の名前に由来した病名です。ジャンプ、キック、ダッシュなど、ひざの曲げ伸ばし動作の多いスポーツでとくに起こりやすく、種目としてはサッカー、バスケットボール、陸上競技などによくみられます。オスグッド病は片側に起こることが多いでのすが、競技によっては両側で起こることもあります。