無罪判決を期待していなかったといえば、うそになります。裁判所は6月30日、検察側が請求した供述調書38通のうち11通を「任意性がない」と却下しました。検察官の誘導、威迫による取り調べを認め、厳しく批判した。我々の訴えに耳を傾けてくれるんじゃないかと思っていました。

 でも、そうではなかった。執行猶予はついたものの、ほぼ検察の求刑どおりの量刑に脱力しました。

 04年の政治資金収支報告書に書くべきところを翌05年の報告書に記載したという事実はある。私自身は何らやましい気持ちはありませんが、どう評価するかは裁判所次第だと思っていました。

 本当に驚いたのは、「水谷建設から小沢事務所への裏献金」を事実と認定されたことです。

 判決の読み上げが始まって30分くらいたったときでした。後ろに座っていた弁護団から「判決要旨」が回ってきたんです。ペラペラとめくっていたら、水谷建設からの5千万円を推認するくだりが目に入った。

 まだ、裁判長の読み上げはそこまで至っていないときに休憩になり、被告人控室に戻って、大久保(隆規)さんと池(田光智)ちゃんに「5千万円、認定してるよ」って伝えたんです。2人も「えッ!?」って、顔を見合わせていた。

 水谷建設からの5千万円はまったく存在しません。取り調べ中に田代政弘検事が言っていた、
「裁判は周辺事実を積み上げた結果で、事実とは違うから。石川さんはまだ裁判をわかっていない」
 という言葉が頭をよぎりました。

 これは取り調べを録音したテープにも残っていますが、田代検事も吉田正喜・特捜部副部長(当時)も、私が水谷からの5千万円を受け取っているとは思っていない、と明言しています。常識的に考えても、これだけ社会や捜査機関の談合への目が厳しくなっているなかで、1社で5千万円も出す企業があるなんて考えられません。実際、いまはパーティー券1枚買ってもらうのも大変なんです。

 判決のなかで裁判所は「小沢事務所が長年にわたり企業との癒着の下に資金集めを行っていた」と指摘しています。癒着は一切ありませんが、関係が深かったこと自体は否定しません。しかし、それは1980年から00年まで秘書を務めた高橋嘉信さんの時代の話です。高橋さんは個人の力で、企業から献金を受けたり、パーティー券を買ってもらったりしていましたが、大久保さんにはその力はありませんでした。

 判決後、小沢さんとは言葉を交わしていません。川島智太郎議員から激励の電話をもらった際に「先生は元気ですか?」とたずねたところ「元気です」と言うので、「よかったですね」とだけ言いました。

 正直に言うと、もう裁判も議員もやめて出直したいと思うこともあります。拘置所を出た後は、国会が開かれるたびに議員辞職勧告決議案が出されていますし、「辞職して出直して」と言う地元の有権者もいます。夜、布団に入ると、自分の人生はこれからどうなるんだろうという不安にも襲われます。

 でも、こんな判決が出たら、やめるわけにはいかない。水谷建設からの裏ガネを認めることになってしまいますから。

 近く日本BS放送のアナウンサーである阪中香織さん(27)と結婚します。彼女とは奇妙な縁があります。彼女の親族も東京地検特捜部に逮捕されたことがあるんです。その姿を見て特捜部のことをよく知っているのでしょう。いま私にとって彼女は精神的な支えとなっています。

 判決の翌日、9月27日に東京高等裁判所に控訴しました。高裁でどんな結果になろうとも、なお闘っていきます。 (聞き手 本誌・大貫聡子)


週刊朝日