小沢さんの名前を書こうと決めたのは、本会議場に入ってからでした。

 前日、松木謙公衆院議員(6月に菅内閣不信任決議案に賛成し、民主党を除籍)から「明日、自分の名前を書こうと思っている」と電話がありました。翌朝の電話では、「やっぱり『海江田』と書くことにした」と言う。私は、「『小沢一郎』と書こうと思ってますが、まだ迷っています」と答えました。決心したのは、本物のリーダーを選ばなければと思ったからです。

 今回の代表選も、最後はやはり「親小沢か、反小沢か」になった。これまでも選挙で負けるたび、「小沢は終わりだ」と言われながら、常に小沢さんは政局の中心にいる。結局、誰も1993年に小沢さんが書いた『日本改造計画』を超える国家観、政策を打ち出せていないからだと思います。

 小沢さんは当初、西岡武夫参院議長で候補者を調整していたようです。西岡さんは頑固一徹な方で、小沢さんにもおもねらない。原発など利権が絡んだ問題でも自分の考えを貫け、野党からも一定の信頼を得ている西岡さんしかいない、と考えたのでしょう。最終的に海江田万里さんを支援しましたが、小沢さんは真剣だったと聞いています。

 私は野田政権にいくつかの懸念を感じます。まず、世間に政権誕生による高揚感がない。さらに、野田さんが文藝春秋9月号に発表した「わが政権構想」を読むと、いきなり「わが国では政治の『段取り力』が劣化している」なんて書いてある。ねじれ国会が念頭にあるのでしょうが、GDPで中国に抜かれ、これから日本はどう生きていくかというときに、力が抜けてしまいますよね。

 増税を公言していますが、増税で景気が良くなった国はないし、被災地の人も平等に負担しなければならない。増税分を復興に振り向ければ業者は多少潤うかもしれませんが、普通の人にはなかなか届きません。

 2012年は米国、ロシアで大統領選があり、中国は国家主席が代わるなど、世界的に大きな変化を迎えます。そのときの日本のリーダーには、小沢さんのように研鑚を積んだ人がやはりふさわしいと思います。 (本誌取材班)


週刊朝日