桜井:仕事に限らず、酒の飲み方も、ずっと変わってきています。50年前は、まだ酒を飲む時、杯のやりとりがあった。そういう酒の飲み方はもうしない。一気飲みも消えました。少しずつ変わるんです。社会も習慣も。

弘兼:コメ作りの農家さんとのお付き合いは変わりましたか。

桜井:うちは酒蔵の中でも珍しく、お米を農家さんから直接仕入れていて、関係がとても密接です。今回は途中で製造量を半分に落としたのですが、その時、5千トンものお米が浮いてしまうことに気づいた。しかし、それだけの山田錦を買うのをやめたら日本の農家はかなり破綻(はたん)すると思います。あの時、とてもじゃないがそれを農家さんに言う度胸はなかったです。どうしていいかわからないけど、とりあえず発表するのは待て、と。そうこうしているうちに中国が立ち直ってきて、国内もちょっと持ち直してきた。農家さんも最初はわからないけど、だんだん理解してくれるじゃないですか。うちが何をしたかというのが。そういう意味で言うと、今回のコロナを通して、うちは農家さんとの関係はより密接になりましたね。親戚づきあいみたいになったと感じています。

櫻田:現在モスは、七つの農業生産法人に出資しています。経営をしたい、いい作物を作りたい、将来は日本の農作物を海外に、という志を応援したいと考えています。モスの場合は、全体で見ればコロナでお店が大きな打撃を受けた店舗が少なかったため、出荷数が大幅に減ったというのはありませんでしたが、取引先の農家さんが困っていたので、物販やオンライン販売を共同で実施しました。

弘兼:私たち3人はピンチの時にチャンスをつかむ力というか、めげない(笑)。でも我々に限らず誰にもピンチの時に何らかのチャンスは目の前を通過しています。それをつかむか見過ごしてしまうかの違い。それによって人生が変わってくる。

櫻田:弘兼先生と同じ意見です。私自身も、自分が何か特別なことをしているとか頑張っているとかそういう意識はほんとにないですよ。ただ何かわからない、もしかしたら、目に見えない力が何かの困った時に急に、それが弘兼先生がおっしゃった……

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