俳優として活躍してきた二人が、プロデューサーとして映画を作った。裏方として現場に立ちながら、「違う景色が見えた」という。いまなぜ制作側に回ろうという思いが芽生えたのだろうか。AERA 2020年8月31日号に掲載された記事で、映画制作への思いを聞いた。
* * *
映画「ソワレ」は、村上虹郎、芋生悠(いもうはるか)が主演を務め、過去から逃れられない男女の逃避行を描く。豊原功補はプロデューサーとして、小泉今日子はアソシエイトプロデューサーとして、脚本の段階から撮影終了まで、徹底して“現場”に向き合った。
豊原功補(以下、豊原):プロデュースは初めてということもあり、撮影中もずっと現場にいましたね。「きちんと見届ける」ということが一つテーマとしてありました。とにかく忙しかったですね。地元の方をはじめいろいろな方に協力して頂いたのですが、それでも足りない部分は自分たちで対処していかなければいけなかった。
小泉今日子(以下、小泉):現場でなにかあった時にジャッジしなければいけないのがプロデューサーだと思うので、スタンバイしている感じですね。役者さんたちが現場に出入りするときには、車両が足りなくなるので、我々も東京から撮影場所である和歌山に7時間くらいかけて車で入って。
豊原:役者さんを車で宿にお迎えに行き、現場までお送りする、ということもしていました。
小泉:たとえば、虹郎君は撮影が残っているけれど、芋生さんは撮影が終わって、というときは、ロードムービーなのでロケ地がどんどん宿から離れていってしまう。宿で先に休んでもらおう、と思った時に「いま送り届けられるのは私か!」と。
豊原:どちらか行けるほうが行って、また現場に戻って。
小泉:高齢のエキストラの方が多い撮影では時間さえあればお茶を配って。勉強になりましたし、違う景色が見えました。
豊原:主演の二人はしっかりしていましたよね。
小泉:「ちゃんと役者でいよう」という意識が高い二人だったので、監督ときちんとお話をしていましたし、我々が役者だからといってとくに相談されることはなかったですね。
豊原:芋生さんがいまこんなところに不安があるのではないか、というのはおそらく小泉さんが見ていただろうし、虹郎君はこう考えているのではないか、というのは、僕もどこかで見ていたと思うのですが、役者とプロデューサーとして一定の距離を取っていた。彼らも甘えのようなものはなかったと思います。
(ライター・古谷ゆう子)
※AERA 2020年8月31日号より抜粋