「それまでは私の資産に興味がある人ばかりでしたが、初めて自分のことや結婚生活に対する夢が話せました」(浩さん)

「私には譲れない条件があったのですが、きちんと向き合ってくれました」(百合子さん)

 百合子さんの条件は二つあった。1点目は、クリスチャンとして教会に通うことを認めること。2点目は百合子さんの実家で両親と暮らしている娘が嫁ぐまでは、自由に会いに行かせてくれることだ。

「『信仰がある』と言われて驚きましたが、彼女が通っている教会は、以前に私が英会話を習っていた教会でした。何か運命的なものを感じました」

 現在、百合子さんは週末は両親と娘がいる実家に帰り、家族で教会にも通っている。

 自宅が仕事場の浩さんは、以前は1日に18時間は働くワーカホリックだった。新聞を読む時間もなく、食事は母親が作ってくれるものを短時間でかき込んでいた。

 結婚してからは百合子さんと母親が作る食事をとり、体を気づかうようになった。仕事最優先の考え方に変化が生まれ、百合子さんと外食したり、コンサートを楽しんだりと息抜きをするようになったという。

「仕事は大切ですが、外出先で『仕事なんかしている場合じゃないわよ』と諭されると私まで楽しくなくなってしまう。お互いに苦労が多い人生でした。これからは夫婦ふたりの時間を楽しみたいですね」(浩さん)  (藤村かおり、三浦香代子)

■「出会いの絶対量」を増やそう■

『「婚活」時代』の著者で中央大学文学部教授(社会学)・山田昌弘

 長引く不況、リーマンショック、そして今回の震災と、「独りでいること」の不安が高まり、世代に関係なく結婚を考える人が多くなっています。しかしゼロから生活をつくりあげる若い世代と違い、熟年の場合は既に何十年という生活の積み重ねがあります。結婚=子どもをつくるという壁は取り払えますが、互いの生活をいかにすり合わせるかがポイントになります。

 未婚か再婚(離別・死別)か、子どもはいるか。熟年結婚は背景も多様です。統計上では、50代男性のほぼ5人に1人は独身です。とはいうものの、パートナー探しが当たり前の欧米と異なり、日本人は受け身で、男性は年を取るほど会社以外の人間関係がない傾向にあるので、結婚したいなら「出会いの絶対量」を増やすことが、婚活の鉄則です。

 そのチャンスのひとつが「趣味」の共有です。男性ならば、観劇や食べ歩き、女性であれば、ゴルフや競馬など、「異性が好むこと」をしていると、出会いの場も広がり有利です。

 先日たまたま、川哲也さんのバレエを見に行ったのですが、見渡すと劇場の99%を女性が占めていました。今から新たな趣味を持つのなら、異性が多く、共に楽しめるものを選ぶのも方法です。

 結婚相談所も選択肢の一つですが、サービスの質や信頼性についての「認証マーク」を取得しているかどうかを判断基準にするといいでしょう。結婚相談所のメリットは、相手の背景がわかり、条件に合わせて出会いを調整してくれるところです。

 自分で婚活する場合に比べて楽ですが、入会して安心するのではなく、自身を磨くことも大事。男性はコミュニケーション力を高め、聞き上手であること。女性は相手に要求しすぎないことも必要です。

 伴侶を見つけて、いざ結婚へと向かう場合は、「お金」「家事」「お墓」などについて、あらかじめ決めておくといいでしょう。子どもがいる場合、特に息子は親の財産を期待して、確執が生まれることもあるので、円満な関係を築くために、よく話し合いをすべきです。

 日本人の寿命が延びるなかでは、熟年婚もますます増えていくのではないでしょうか。「待っているだけ」の時代は終わり。これからの日本人はもっと積極的に、楽しく、定年後の男女交際や結婚を考えてもよいと思います。


週刊朝日