「コンビニ百里の道をゆく」は、51歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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先日、某テレビ番組で一流スイーツ職人の皆様にローソンの商品を評価していただく機会がありました。コンビニスイーツといえばローソンだと自負しています。イチ押しスイーツTOP10を持ち込み、自信をもって挑戦しました。
それが、9~7位までの商品がいきなり3連続で不合格。出演した社員が顔面蒼白になる姿はテレビ越しでも心配でした。不合格の札が上がり、続く審査員の専門家の皆様の手厳しい声に地獄に突き落とされるような気持ちにも。ですが、改めて噛み締めると専門家の皆様のご指摘は本当にありがたく貴重なお話。
ローソンでは毎週火曜日に新商品を発売しています。その中でヒット商品をたくさん出してきました。それが、ある専門家の方に「発売日を決めていることが足かせになっているのでは」といった指摘をいただきました。
毎日来店されるお客様にもワクワクする商品をお届けするためには、スピード感が不可欠だと考えていますが、一方で期限を切らない勇気も必要だと気付かされました。
一方、バスク風チーズケーキの「バスチー」や「プレミアムロールケーキ」など高評価をいただいた商品に共通するのは、お客様から長期的に愛されていること。市場の声を採り入れながら発売後も改良を重ねたスイーツはしっかり美味しさを届けられているのだと感じています。
日頃から社内だけでなくメーカー、パートナー企業と共に商品開発をしていますが、チームが固定されてしまうと新しい価値観が入ってこなくなることも事実です。
今回のテレビ番組をきっかけに、今後、外部の専門家を招いて社内で審査イベントを行うのはどうかとも考えました。今までの常識を常に疑い、専門家の意見も大切に、最後はお客様にご評価いただきたいと思います。番組にも再挑戦したいと考えています。
竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
※AERA 2020年9月7日号