ネット上で批判をしてくる人は、コロナ禍での経済活動自粛に反対する人が多いという。自粛反対派のYouTuberから対談を求められたこともあったが、「アクセス数を増やして広告料を稼ぎたいのでしょうが、切り取って編集されるのがイヤなので断りました」(斉藤さん)。

 誹謗中傷のアカウントをブロックし始めると、その数は今や1千アカウントを超えた。

 病院で検査を受けても「異常なし」で、処方されるのは解熱剤や鎮痛剤だけ。感染から5カ月経って回復の兆しは少しだけ見えてきたが、母親は「完治できるのか不安」と途方に暮れている。

 コロナ後遺症については、すでに海外で報告が相次いでいる。

 イタリア・ローマのジェメッリ大学病院の調査結果では、調査した143人の患者のうち、発症から2カ月の時点で87・4%の患者に何らかの症状が続いていることがわかった。訴えが多いのは倦怠感や呼吸困難で、集中力や記憶力の低下も報告されている。

 斉藤さんも集中力が続かずに、自宅学習も限られた時間にしかできないという。

 8月11日には、米国の科学誌「ニューロロジー」電子版にもコロナ後遺症に関するリポートが掲載された。症状は「長期間COVID−19」や「ロングテールCOVID−19」と呼ばれ、検査をしても身体に異常が認められないことが多いというのだ。

 米国の感染症の権威で、ホワイトハウスのコロナ対策チームの顔となっているアンソニー・ファウチ博士は、多発するコロナ後遺症について「筋痛性脳脊髄炎(ME)の症状に似ている」と発言している。MEはかつて、「慢性疲労症候群」と呼ばれていた。

 この病気に詳しい国立精神・神経医療研究センターの山村隆医師が、次のように解説する。

「コロナウイルスの一種で2002年に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)でも、MEは多数発生しました。ウイルスに感染した後に発症する人が多いのが特徴です。すでに日本でも、コロナ後遺症でMEの確定診断を受けた人がいます。しかし、日本ではMEに詳しい医師が少なく、診断がつかないまま経過観察になっているのが実情です」

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後遺症増えれば、国の財政圧迫