止水対策がほとんどない条件でのシミュレーションだが、地下鉄のリスクが大きいことがわかる。

 大阪でも国交省近畿地方整備局などが淀川決壊の場合のシミュレーションを公表しており、14路線、100駅が浸水、1日約398万人の乗降客に影響が出るとしている。

 土屋さんはこう語る。

「北千住駅の近くには地下から地上に出るトンネルがありますが、5~10メートルもの浸水が想定されている。ここから水が入り、千代田線をつたって東京駅にまで水が来ることがあり得る。新幹線の駅や地下街も浸水すれば、被害は大きくなる」

東西線の南砂町駅。駅に入るためには10段の階段を上った後、地下へ下る。なんとも面倒な構造だが、浸水対策の一環だ。付近は埋め立て地で、標高はマイナス0.6メートル。近くに住む女性(77)は言う。

「今では想像つかないけど、主人が『幼いころここで海水浴をよくした』と言っていた」

 駅の出入り口には防水扉もあり、水を防ぐ準備がしっかりとされている。

 東京メトロでは、浸水リスクのある駅で出入り口の止水板のかさ上げや完全防水化などを実施。浸水したらポンプで排水する対策を取っている。今年2月には、千代田線の北千住駅近くにある地上と地下をつなぐトンネル出入り口に防水ゲートを設置。1枚3トンの扉を3枚閉めて、大量浸水を防ぐ。

 都営地下鉄や大阪メトロでも、浸水対策や避難訓練などを行う。江東5区における大規模水害については、国や自治体も参加して避難対策などを検討している。

 しかし、決して万全とは言えない。地下鉄につながる地下街やオフィスビルなどの出入り口から、浸水してくるリスクがある。関西大学の石垣泰輔教授(防災水工学)はこう指摘する。

「バリアフリーが進み、水が入りやすくなっている施設もある。また、ビルによっては対策に差がある。1999年と03年に博多駅(福岡市)周辺で浸水した際には、2度目の浸水を免れたところと、2度とも浸水したところがあった」

 地下で浸水に遭遇したら、どう対応するべきか。

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