猛烈な勢力に発達し、気象庁が最大級の警戒を呼びかけた台風10号など、今年も豪雨が各地を襲っている。私たちが日常的に使う駅は大丈夫か。ハザードマップを見ると、人口が集中する東京23区や大阪市の多くの駅で、浸水リスクがあることがわかった。駅で浸水に遭遇したらどうするべきか。
「キャー、怖い!」
JR東川口駅(埼玉県川口市)構内で上がる悲鳴。外では雷の落ちる音が何度も響いた。構内には川の急流のように大量の水が流れ込んできた。8月12日、関東各地でゲリラ豪雨が発生し、同駅周辺は冠水した。構内は停電し、武蔵野線は運転を一時見合わせ。その場に居合わせた20代の多鳴鍵(ツイッターアカウント名)さんは振り返る。
「改札の中も浸水し、くるぶしまで水が来た。自分も含めて20人ぐらいが水の来ないところに集まった。おびえて悲鳴を上げる人もいた。どこまで水が増えるのか不安で、手が震えた」
今年も大雨の被害が相次いでいる。7月に熊本県南部を襲った豪雨では、JR肥薩線やくま川鉄道で線路の下の地面が流出したり、車両が浸水したりするなどした。くま川鉄道の湯前駅(同県湯前町)近くにある明導寺の住職・藤岡教顕さん(46)はこう話す。
「鉄道が通る橋や線路が根こそぎ流された。新型コロナウイルスの影響でボランティアも来ることができず、復興の道筋はまだついていない。特に車に乗れない高齢者や学生への影響が大きい。胸が痛みます」
民間気象情報会社「ウェザーニューズ」によると、フィリピン海の海面温度が高いため今月は平年より台風の数が多くなる。さらに日本周辺の海面も温度が高く、勢力を維持して上陸する台風が多くなる可能性があるという。
浸水は一歩間違えば、命にかかわるリスクがある。復旧まで長い時間を要し、地域住民の生活に多大な影響を与えることもある。そこで編集部では、最大規模の豪雨による大きな河川の洪水や大地震による津波を想定した国土交通省の「重ねるハザードマップ」を使って、東京23区と大阪市にある全ての駅の浸水リスクを調べた。