子宮体がんには年間約1・6万人が新たに罹患しており、女性ホルモンのエストロゲンが発生に関与するタイプが約8割を占める。比較的見つけやすいがんといわれるが、見逃さないためにはどうすればいいだろうか。
【子宮体がんデータ】不正出血には注意!症状やかかりやす年代は?
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■ 子宮頸がんとは別の疾患 女性ホルモンが関与
子宮体がんは、女性特有の臓器である子宮の体部という部分にできるがんだ(イラスト参照)。子宮には、子宮頸部に発生する子宮頸がんもあるが、子宮体がんと子宮頸がんでは発生する場所も、がん細胞も、発生のしかたもまったく異なる。子宮体がんと子宮頸がんに関連性はなく、まったく別の疾患ととらえていいだろう。
子宮頸がんはヒトパピローマウイルスというウイルスの感染によって引き起こされるがんで、20代、30代の若い世代から発生のリスクがある。一方、子宮体がんにはいくつかの種類があるが、そのうちの一つでタイプ1と呼ばれるものが約8割を占める。タイプ1は40~60代の閉経前後の年代に多く、エストロゲンという女性ホルモンが発生に関与している。
卵巣からはエストロゲンとプロゲステロンという二つの女性ホルモンが分泌されていて、子宮内膜の増殖を調整している。エストロゲンには増殖を促進する作用が、プロゲステロンには抑制する作用がある。
タイプ1の子宮体がんは、なんらかの原因でエストロゲンの刺激が長く続くことで発生する。多くは子宮内膜異型増殖症という状態を経て、子宮体がんになる。妊娠・出産歴のない人、閉経が遅い人、排卵障害があって月経不順や不妊症の人が高リスクとされている。また、肥満があると脂肪中の酵素がエストロゲンの量を増加させるため、高リスクとなる。
子宮体がんには、エストロゲンとは関係なく発症するタイプ2もある。タイプ1より高齢層(70代以上)に多い。子宮内膜異型増殖症を経ずに発症し、がんの性質が悪く、悪性度が高い。タイプ2は、子宮体がんのおよそ2割程度を占めると考えられている。
そのほか、遺伝子異常が関係するものがあり、「リンチ症候群」が代表的だ。子宮体がんだけでなく大腸がんや卵巣がん、胃がんなどになりやすく、頻度としては子宮体がんの約5%と低い。ここではタイプ1を中心に述べることにする。
■ 自覚症状は不正出血 赤い血でなくても婦人科受診を
子宮体がんでは自覚症状として不正出血が起こることが多い。進行すると下腹部の痛みやおなかが張った感じ(腹部膨満感)などがあらわれることもある。神奈川県立がんセンター婦人科部長の加藤久盛医師は次のように話す。