中野:この実験では、針金のママではなく毛布に抱きついて育った赤ちゃんは、成長して子どもを産んだとき、うまく育てられなかった……という結果になりました。もしかしたら、これが連鎖ということなのかもしれない、とこの実験を知った多くの人は思ったと思います。子どもが寄ってきても知らないふりをしたり、自分の近くに寄せ付けないというとは、人間でいうならネグレクトや虐待に当たるといえそうです。ただ、人間には救いがあって、自分は母親に抱きしめられたことがなくても、学習によって自分の行動を変えることができるということです。
おおたわ:いわゆる認知行動ですよね。私も、そうすることで母の影響から抜け、自分の人生を切り拓いてきたんだと思います。母親が落ちたような泥沼が自分の行く先に点在しているように見えたので、私は一生懸命、その脇を縫って歩いてきました。母を反面教師にしていたのでしょう。それがあったから、自分自身は社会的に大きな問題を起こすことなく、たまたまここまで生きてこられたんだと思っています。
(構成/三浦ゆえ)
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