※写真はイメージです (GettyImages)
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GNヒアリングジャパンの検証結果。上がマスクなし、下がマスク着用+シート。上は高音域の層が見えているが下は見えない
GNヒアリングジャパンの検証結果。上がマスクなし、下がマスク着用+シート。上は高音域の層が見えているが下は見えない

 スーパーのレジで金額を聞き間違えた、病院の受付で、事務の人の話す内容が聞き取れない……。

【画像】マスク有り、無しで聞こえにくさを検証・視覚化した結果がこちら

 コロナ禍の感染予防対策として、マスクをする生活が当たり前になっているなか、新たな問題が生じている。それは“会話が聞きにくい問題”だ。済生会宇都宮病院耳鼻咽喉(いんこう)科の新田(しんでん)清一医師は、「最近、診察のときに『マスクを着けた人の会話が聞きにくいので困っている』と訴える患者さんが非常に多い」と話す。

「今の世の中、特に高齢者は、外出中は最低限度の会話にとどめているようですが、その最低限度の会話がマスクで聞き取れない。特に相手が忙しそうだったり、聞き返せない雰囲気を醸していたりすると、わからないままにしてしまう。後で金額を間違えるなど、齟齬(そご)が生じて困っているようです。これからこうした問題がもっと表面化してくるのではないでしょうか」(新田医師)

 確かに、マスクをした状態で話されると、こもったような音になって、言葉が聞き取りにくい。なぜそうなるのか。補聴器メーカーのGNヒアリングジャパン(横浜市)が、マスク着用時の聞こえにくさを検証した。

 まず、マスクなしの場合と、医療用マスクを着けた場合、医療用マスクの着用に透明のシートを加えた場合の、三つの状況を設定。それぞれの状況下で、スーパーのレジを想定し「お会計は2342円になります」という文章を読み上げる。それらの音声をデータ化し、分析ソフトで視覚化した。

 その結果、マスクなしの音声では存在していた高音域の層が、マスク着用や、マスク着用+シートでは、ほとんど消失していた。

 我々が発する音声(声)は、肺から吐き出した空気が声帯を振動させることで生まれる。そこに舌や口の動きが加わることで、音声が言葉となるわけだが、今回の検証にかかわった同社・聴覚専門家の藤垣均さんは、この振動による波長が、マスクによる聞き取りの困難さに関係する、と分析。

「音声の高さは波長によって変わり、高ければ波長は短く、低ければ長くなります。基本的に音声の通り道に障害物があると、高い音は通り抜けにくく、低い音は通り抜けやすい傾向があります。まさに今回の検証で、マスクでも同様のことが実証されました」

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