まずくて低品質。そんなマイナスイメージを払拭し、北海道米が快進撃を続けている。
柴田精米所(長野県大町市)を営む柴田進社長はこれまで、県内外の農家に足を運び、日当たりや水質、栽培方法を調査しながら、コメ一粒一粒を吟味して仕入れてきた。試食したコメは300銘柄以上。こうした努力が認められ、食糧庁長官賞も受賞した。最近、その柴田さんを唸らせたのが北海道産「ゆめぴりか」。
「おや、なんだろう。甘くて粘りがある。いままでのコメとはまったく別の食感だ。普通のコシヒカリよりも断然うまい。しかも粒が大きくてそろっている。これなら地元でも売れるかもしれない」
都内の小売店やスーパーでは道産「ゆめぴりか」が好調で、品薄状態の店舗もある。タレントのスザンヌさんを起用したテレビCMの影響だけでなく、コメの味そのものが近年、急速に向上したからだ。
「ゆめぴりか」の品種改良を手がけた道立総合研究機構農業研究本部上川農業試験場の高宮泰宏研究部長は、食味の改善についてこう解説する。
「04年にホクレンから、魚沼産コシヒカリのような『特A』がとれる品種を育成してほしいと要望されたのが転機でした。冷涼な風土にあった品種改良をするなか、コメの成分でデンプンの一種であるアミロースに着目しました。この量が少ないと、粘りが出て、冷めても食味が低下しにくい。アミロースを適度に少なく抑えるのが理想です」
通常の道産米のアミロース含有量が20%程度なのに対して、コシヒカリと同等の15~16%程度に抑えた。
米店「スズノブ」(東京都目黒区)の西島豊造代表取締役によれば、道産米に注目が集まるのは、うまさだけでなく、マーケティングも大きいという。
「全国においしいコメは数多いが、そのほとんどが地元に埋もれてしまっています。行政やJAがうまくブランディングできず、広報戦略も中途半端なことが多いからです。しかも、流通経路が限られ、地元以外の消費者に届かない。北海道は道庁とホクレン、農業試験場と生産者が一体となって『ゆめぴりか』というブランドを育ててきたのが奏功しました」
※AERA 2013年1月14日号