コロナ禍では、リーマン・ショックと比べて飲食業や宿泊業がダメージを受けている。専門はとくに女性に影響が大きいと不安視する。AERA 2020年10月12日号の記事から。
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東京大学の川田恵介准教授(労働経済学)はリーマン・ショック時との比較から、今回のコロナ禍が今後、労働市場にさらに重大な影響を及ぼす可能性を指摘している。
「飲食業や宿泊業など不況に強いとされる内需系が直撃を受けているのが特徴です」
川田准教授によると、リーマン・ショック時に比べて今年のコロナ禍では「飲食・宿泊業」と「卸売り・小売業」の分野で顕著に就業者が減っており、特に女性への影響は大きいという。
そこで編集部では、女性の産業別就業者数の動向についてリーマン・ショックの影響と、今回のコロナ禍の影響を比較するため、ここまで今年2月と7月の数値を比較してきたのと同様に、リーマン・ショックが起きる直前の08年8月と、その5カ月後にあたる09年1月の数値を比較してみた。
統計上の産業分類の変更があるため厳密な比較はできないが、例えば「飲食・宿泊業」では、コロナ禍の2月から7月の間に就業者数が5.2%減っていたのに対し、リーマン・ショックの前後5カ月間では就業者数が逆に12.6%増と大幅に伸びていた。「卸売り・小売業」はコロナ禍で8.4%減だったのに対し、リーマン時は5.7%減だった。
「こうした産業は労働条件に問題を抱えつつも立場の弱い人たちを含めて幅広い人たちに雇用を提供しており、社会のセーフティーネット的な役割を果たしてきました。コロナ禍はそこを直撃しているため、今回は貧しい人たちをより貧しくするという大きな問題を抱えることになります」(川田准教授)
統計で見えなくても、職を失った人は現実の生活を迫られている。著名な企業に勤めていた東京都の元派遣社員の女性(42)が取材に応じた。9月30日に契約が満了したばかりだ。