落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「新首相」。
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新首相がはりきっている。仲が悪いと噂されている都知事との会談でも、グーを合わせてエールの交換。双方とも瞳の光量が弱かったけども、早くギュッと握手出来る日が戻りますように。
新たな大臣の顔ぶれを見る。注目はデジタル大臣。「デジタル」というカタカナを見るとホントにデジタルなのかどうか不安になってくる。漂ってくる、あだ名感がすごい。
初めての閣議にて。新首相が切り出す。「みんな聞いてくれ! 今日からオレたちの仲間に加わることになった、平井……じゃ堅いな。何か得意分野はあるか、平井?」「はい! 自分はデジタル方面が……」「よし! 決まった!お前は今日から『デジタル』だ! みんな『デジタル』をよろしくな!」。『デジタル』大臣誕生。
「先輩、この内閣はみんなニックネームがつくんですね」「仲間との距離を縮めるのがあだ名。本名以外のもう一つの名前をニックネームというのなら、いわばそのニックネームがあだ名であり、それが我々に必要不可欠であり極めて重要なもう一つの名前と言っていい……」「『ポエム』先輩。今日も飛ばしてるなぁ」
「オレは『バーベQ』。前のボスとはよくバーベキューしたものさ」「あー、加計さんと」「シーッ! もうみんな忘れかけてんだから! 新ボスも『あれは済んだ話』って言ってるし」「ボスもあだ名があるんですか?」「なんだと思う?」「『パンケーキ』とか『ガースー』とか?」「『集団就職』。そっちのがイメージいいからって。『叩き上げ』も候補だったね」「なんだかなぁ」
「私なんか『トライ』だよ」「ラグビーやってたんですか?」「いや、前のボスの家庭教師だったんだよ。調子に乗って言いまくってたら、入閣が遅くなっちゃった(泣)」「『家庭教師のトライ』か」
「橋本です、よろしく」「わかった! 『スポーツ』?……そのまんまか」「私は『スケート』よ」「かなり直球ですね」「冬は『スケート』。夏は『自転車』。でも打ち上げでは『キッス』」「そんなこともありましたね……それこそみんな忘れてるのに……」