植松聖死刑囚が重度障害者19人を殺害し、26人に重軽傷を負わせた「相模原障害者殺傷事件」から4年が経過した。その現場となった津久井やまゆり園などを運営する「かながわ共同会」をめぐって、騒動が勃発している。これまで神奈川県から虐待が疑われる行為が数十件も指摘され、立ち入り調査も行われたが、トップが通報者に圧力をかけていた疑いが県議会で指摘されたのだ。事件の「後」に、一体何が起こっているのか。
【写真】殺傷事件の後に公開された「津久井やまゆり園」の内部の様子
* * *
10月7日、神奈川県議会の厚生常任委員会で“ある疑惑”が追求された。
津久井やまゆり園などを運営する「かながわ共同会」(以下、共同会)の理事長が施設の職員宛てに出した文書の内容について、こんな質疑があった。
市川よし子県議「『職員の皆さんへ』という文書のなかで、(施設内における虐待の)通報者は懲戒処分の対象となり得ると受け取れる内容があったと聞いています。それは事実でしょうか」
担当課長「そういった趣旨のことが書かれているのは事実です」
市川氏「障害者虐待防止法では、虐待を受けたと思われる障害者を発見した人は、誰でも速やかにこれを通報する義務があると書かれています。また同法には、通報を理由として解雇、その他不当な扱いを受けないとなっており、通報者保護が定められている。この文書は法令に抵触する恐れがあるのではないか」
担当課長「共同会側に対して障害者の虐待通報を抑制することがないように、適切な対応を求めたところでございます」
つまり、戦後最悪とも言われる殺人事件が起きた障害者施設の運営法人のトップが、“虐待隠し”とも取れる行為をしていた疑惑が取り沙汰されたのだ。
話は9月初旬にさかのぼる。共同会が運営する「愛名やまゆり園」(厚木市)で、入居者を居室に長時間閉じ込めているとの匿名の通報があり、9月2日に県が同園に立ち入り調査に入った。これを毎日新聞(デジタル版)がすっぱ抜き、実際に居室のドアの引き戸にガムテープが貼られている写真などとともに詳報。関係者の話として、男性入居者はミトン(手袋)をはめられており、扉にガムテープを貼られると自力で開け閉めすることはできなかった、など「閉じ込め」の疑いも詳しく記されていた。