「長期間にわたる施錠や恒常的な拘束など、明らかに『一時性』から逸脱しているものが目に付きます。ほとんど一日中、何年も拘束されている。それでおとなしくなったとしても、諦めや無力感からくるもので、明らかに人権を侵害しています。植松死刑囚が法廷で入居者を人間扱いしない施設の対応に触れましたが、記録に残らない部分でも虐待が存在する可能性が高い。記録に残らない以上、実際に働く職員から話を聞くしかないのに、理事長は通報した職員を引き合いに出し、見せしめのような文書を流した。不当な身体拘束と通報者への脅し、二重の意味で背信行為です。共同会はトップのガバナンスに致命的な欠陥があると思っています」
なお、県の担当者によると、共同会は文書をすでに削除しているという。県は共同会に対して定期的に監査やモニタリングを行っていくというが、もしこのまま改善がみられなくても、園の運営を任せるつもりなのだろうか。
「制度上、(指定管理の期間を)延長しないということは、すなわち指定の取り消しということになる。改善勧告や改善命令をして従わなければ取り消しとなるが、現時点ではその予定はない。だが、今回の園の文書は不適切。虐待が疑われるようなことがあった場合は、すぐに通報してもらうように指導を徹底していきたい」(福祉部障害サービス課長)
問題となった文書や、検証部会から指摘された身体拘束について、共同会はどう考えているのか。常務理事の樋川芳夫氏は取材にこう答えた。
「文書は毎日新聞の報道が事実ではないことに対して、職員を激励する意味を込めて出したものだ。利用者は自傷行為があるのでミトンをしていた。ドアの取っ手をガムテープで貼ったのは、そこに頭を打ち付けてしまうので中にクッションを入れてカバーするため。利用者が自分で扉を開け閉めできたことは家族も含めて誰もが確認しており、決して『閉じ込め』ではない。それにもかかわらず、虚偽の情報をマスコミに提供し、法人の信用を失墜させる行為をした職員がいるのであれば、それは懲戒処分の対象にもなり得るということであり、虐待通報を抑制させるような意図は全くない。ただ、『通報』という言葉を使ってしまい誤解があるといけないので、削除をした。県が言うように『不適切だった』からではない。もちろん、今までのやり方がすべて正しかったと思っているわけではない。検証部会から指摘された身体拘束の事例についても真摯に受け止めて、これからも改善をしていかなければいけないと考えている」
くしくも、植松死刑囚が起こした事件により、注目されるようになった障害者施設における支援の実態。「虐待ゼロの実現、身体拘束によらない支援」を目指す神奈川県の対応が注目される。(取材・文=AERAdot.編集部・作田裕史、飯塚大和)