現場での作業は過酷を極める。
作業に当たる際は、亡くなった人が何らかの感染症にかかっていたことを前提にして作業に入るという。これまでも、肝炎や肺炎などあらゆる可能性を考えてきたが、今年は当然、コロナへの感染も視野に入れている。
入室の際は、防護服にゴーグル、手袋などを装着し、完全防備する。防護服の外側に除菌効果があるとされる光触媒のコーティングを付け、内側には銀イオンのスプレーを吹きかける。
防護服を着るのは細菌やウイルスから身を守るだけではなく、消毒や臭い消しのために使う強力な薬剤から守るためでもある。
夏場などは、想像を絶する状況だが、どんなに暑くても窓を閉め切ったまま、大量の汗をかきながら作業をするという。
その理由について塩田社長はこう語る。
「死後何カ月も経っているような場合、ウイルスは死んでいますが、大腸菌などさまざまな細菌は繁殖しています。窓を開けるとハエが入ってきて遺体の体液が付きます。そのハエが近隣の住宅に飛んで行けば、昆虫媒介によって二次感染を起こす危険性があるからです」
防護服など装備品は高価だが、一度脱いだらすべて使い捨てだ。だから、昼休みは取らない。感染源を広げないためにも、コンビニに弁当を買いに行くわけにもいかない。
一方、作業には慎重を期す。
「何カ月も発見されなかった現場では、床が腐っていることがあります。糖尿病治療のためのインスリンの注射針が大量に落ちていることもありますので、足元には注意しています」
こんなケースもある。
「部屋から抗うつ剤や睡眠薬がやたらと出てくることもあります。最後に大量に飲んだ形跡が残っている場合もありますが、何らかの病気で亡くなったのか、自殺なのかは判別できません」
塩田社長が前述したとおり、現在は近隣住民などによる見守り態勢が崩れており、早く異変に気づいていれば助かったかもしれない命が失われている可能性がある。