


先が見えない新型コロナの影響で、働き方を見直す機会が増えた。それは副業もしかり。テレワークが「時間」と「距離」を取り払い、副業が「地方」と「都市部」を結んだ。AERA 2020年10月19日号から。
* * *
朝8時。携帯キャリア会社社員の鈴木健一郎さん(41)は、自宅でパソコンに向かう。2月からテレワークが基本となり、2時間始業を早めた。夕方4時半には仕事を終え、小3の娘の習い事の送迎や買い物へ。以前は帰宅する時間には寝ていた娘と一緒に過ごす時間が増え、娘も嬉しそうだ。
家族での団らんを楽しんだあと、9時から11時までが副業タイム。本業のウェブマーケティングのスキルを生かし、複数の地方企業のサイト改善などを手伝う。副業は1日1、2時間、月10日程度だ。
「収入も、家族との時間も増えた。この生活が気に入っています」(鈴木さん)
■閉じた世界での仕事
都市で働くビジネスパーソンが地方企業で副業する──。コロナ禍を機に、そんな働き方が注目されている。
地方企業に特化した副業・兼業人材紹介を手がけるJOINS(ジョインズ)では9月末時点で、登録する個人が1月の約3倍の3527人、受け入れを希望する地方企業が約6倍の243社に急増した。同社の猪尾愛隆(よしたか)社長は「とりわけ地方企業側の意識変化が大きい」と話す。
「これまでは、テレワークで働くと言われてもピンとこない企業が大半でした。ところがコロナ禍で(ビデオ会議ツールの)Zoomなどへの抵抗感が一気に薄れ、離れていても仕事は可能だというのが肌感覚で理解されるようになりました」
ジョインズ経由のマッチングには大きく二つのパターンがある。
(1)大手IT系企業で働く30~40代前半の人材が地方の製造・サービス業のネット通販関連の業務を支援するパターン。
(2)大手製造業の40~50代の人材が、地方の製造業のITツール導入などを手伝うパターン。
鈴木さんが副業に興味を持ったのは「本業でやりとりするのは都内の会社ばかり。このまま閉じた世界で仕事を続けていていいのか」と感じたのがきっかけだ。移住にも心は引かれたが、妻の仕事や娘の転校を考えるとハードルが高い。その点、副業は気軽にチャレンジできた。